2025.5.20

8. JMの「職人」はマルチスキルを持つ「サービスマン」へ

JMでは、これまで「職人」と言っていた建設技能者を、2025年から「サービスマン」と呼ぶことにした。

なぜ、「職人」ではなく「サービスマン」なのか?――それは、JMが提供するのが単なる「修繕工事」ではなく、建物の「管理サービス」であるという認識を、JMで働く技能者やスタッフはもちろん、顧客である企業や地方自治体の方々にも持ってもらいたいからだ。

 

「職人」という言葉には「工事作業する人」というイメージがある。大工、電気工、内装工といった工事を行う人たちのことだと多く人が思っているだろう。
彼らの仕事は、「設計図面通りに内装を仕上げる」とか、「照明器具を取り付けて電気配線を設置する」とか、依頼主(発注者)から工事を請け負って完成させること。発注者から指示された仕事を行えばよいので、一定の技能を有している「職人」であれば対応できる。

JMの仕事は、管理する建物が支障なく利用できる状態を維持することだ。建物に不具合が生じれば「修繕工事」を行うが、それだけではない。
日常的に「点検」も行うし、修繕工事に必要な「設計」も行う。地方自治体に提供している包括施設管理サービスでは「備品管理」や「固定資産管理」も行っている。
これらの仕事に対応できるスキルを持った人たちを「職人」と呼べないだろう。だから、彼らをJMでは「サービスマン」と言うことにしたわけだ。

 

 

「点検サービス」は誠実な仕事とお客様からの信頼が要

 

25年前にJMが創業した当時、建物の点検サービスはJMのスタッフが行っていた。不具合箇所が見つかると、フランチャイズ契約を結んだ地元工事会社が見積もりを出して「職人」が修繕工事を行っていた。

その後、管理する建物が増えて「点検」をフランチャイズが行うようになると、点検時の軽微な作業で直せる不具合を、見積を出して修繕を行う事例が散見されるようになった。

リフォーム詐欺事件の常套手段は、建物点検を口実に強引にリフォーム工事を行い、多額の費用を請求する手口と言われる。
今年3月には、関東地方のマンションの大規模修繕工事で受注調整していたとの疑いが強まったとして公正取引委員会が工事会社やコンサルタント会社などに立ち入り検査したとのニュースも報じられたが、こうした問題は後を絶たない。
発注者に疑念を持たれてしまうと、点検サービスを提供することが難しくなる。だからと言って、建物点検を止めてしまって不具合が生じてから修繕工事を発注するのでは、不具合が直るまで建物を利用できなくなる場合もあるし、緊急対応で修繕工事を行えば費用も高額になってしまう。

建物を支障なく利用できる状態に維持管理するには、点検によって劣化状況を把握し、予防的に修繕を行うことで不具合が生じるのを未然に防ぐことである。そのためには、日頃から点検時に不具合に発展する事象を写真撮影して履歴に残し、建物オーナーに対して情報をオープンにすることが重要だ。

地震が発生した後や、台風が直撃した後には、建物オーナーも「何か不具合が生じていないか」と不安になる。そうした時に点検を行って報告すれば安心するだろう。点検作業中にチョッとした不具合を発見した時も「職人」のスキルを持っていれば、その場で修理することができる。
日頃から建物オーナーと良好なコミュニケーションを取っていれば、強い信頼を得られるようになるはずである。

 

 

定期的な健康診断が建物の健康を守る

 

JMの役割は、建物の“医者”になることだと言い続けてきた。
人間の健康を維持するために医者が行っている役割を、JMの「サービスマン」は建物の健康を維持するために果たしていくということである。

人間であれば、健康保険加入者は年に1度、健康診断を実施することを求められているが、建物にも同様の制度がある。
不特定多数が利用する建物では、建築基準法で建物の敷地・構造は3年以内、エレベーターや換気、防火などの設備は1年以内の点検が義務付けられている。
戸建て住宅でも完成引き渡し後、不具合が発生しやすい1年目、その後は10年ごとに点検サービスを提供する住宅会社も多い。

さらに人間の場合は、がんなど特定の病気を発症しやすい年齢になると、健康診断では行わない精密検査や予防接種を行うなどの制度も整備されている。これらの制度は医療機関で集められた膨大なデータを元に対策が講じられてきた。

建物も同様で、設備機器ごとに耐用年数が異なっており、使用頻度によって不具合が生じるタイミングも大きく違ってくる。
一般家庭のトイレで詰まりなどの故障は滅多に起こらないが、コンビニエンスストアのトイレは従業員だけでなく多くの顧客が利用するので故障も起こりやすい。コンビニのトイレは1か所しかないことが多いので、故障が発生すると営業にも支障を来す。

JMでは、創業以来、様々な建物の維持管理を行ってきたので、建物のどの箇所にどのタイミングで不具合が発生するかというデータが蓄積されてきた。
「点検」と言っても、毎回、「健康
診断」のように建物全体を調べるわけではない。建物の点検にも、症状に応じた「精密検査」もあれば、治療後に様子を見る「経過観察」もある。それによって建物の健康を守ることができる。

 


創業当時の「建物診断制度」パンフレット

 

 

薬の投与で経過観察か、手術で根本治療か

 

25年前にJMが創業した当時、建物の点検サービスはJMのスタッフが行っていた。不具合箇所が見つかると、フランチャイズ契約を結んだ地元工事会社が見積もりを出して「職人」が修繕工事を行っていた。
その後、管理する建物が増えて「点検」をフランチャイズが行うようになると、点検時の軽微な作業で直せる不具合を、見積を出して修繕を行う事例が散見されるよう
になった。

医者は健康診断や精密検査で異常を発見したら、必要に応じた治療を行う。JMの「サービスマン」も、建物の不具合や異常を発見したら修繕工事を行って建物の治療を行う。その時に重要となるのが、どのような治療方法を選択するかである。

医者の治療方法には、薬の投与、注射、さらに手術などの方法があるが、それぞれに効果が異なっている。
手術をすれば根治する病気でも、薬の投与で経過を診ることを選択する場合もあるし、保険医療の範囲を超えた高額な薬や手術を勧める場合もある。医者には、患者の要望と状態を判断したうえで適切な治療方法を選択する能力が求められる。

建物の修繕工事でも、同様の判断が必要である。ある箇所の不具合をAという方法で修繕する場合、費用は安く済むが、1年ぐらいで不具合が再発するかもしれない。Bという方法で補修すれば、費用は高くなるが、5年は不具合の発生を防げる。

AとBのどちらを選択するか――。
Aを採用した場合、やはり1年ごとに不具合が発生し、そのたびにAで修繕を行うと、5年間で費用がいくらになるか。それとBとの費用を比較した場合、どちらが維持管理費を節約できるのか。
それを適切に判断する能力が「サービスマン」には求められるのである。